カイロン物語

私はギリシャ神話が大好きです。想像力に溢れる昔のギリシャの人たちは夜空を舞台に、惑星や星が繰り広げる壮大な物語を生み出しました。それは本当にロマンチックですね。
そして射手座の新月に一際目立つのが、弓を持った半身半馬の神、カイロンです。射手座のモデルになったカイロンはクロノス神と妖精ビュルラの子供。クロノスが馬に化けて浮気して出来た子供だったので、半分が馬のケンタウロス族として生まれました。

母はそんな醜い子は私の子ではないと言い、父は浮気なので認めない。カイロンは生まれてすぐに大きな心の傷を負います。

そして、カイロンの本質の良さは太陽神アポロンと月の女神アルテミスから認められ、医術、予言、音楽、弓などのありとあらゆる技術を授けられました。
しかし、神々からは見かけが違うという理由から受け入れられず、野蛮なケンタウロス族からも、優しいカイロンは嫌われ、そこでもまた自分の居場所がないという心の傷を負います。
その後も彼は自分の傷を癒せるヒーラーを探し求めますが、気付くと彼自身の本質に目覚めて、医術の神アスクレピオス,怪カヘラクレス、英雄アキレスなどに様々な技術を教える教師となります。

そしてケンタウロス族と神々との戦闘中に、弟子のヘラクレスの弓の矢が誤ってカイロンに当たります。カイロンは半分が神なので不死身ですから、苦しくても死ぬことが出来ません。そして何よりも誤って射ってしまったヘラクレスの苦しみも負い、二重の苦を抱え込みます。

どれだけ裏切られ、受け入れられず、つらい思いをすれば、大抵の人間は愛することをもうやめてしまうものですが、カイロンは傷ついても誰かを癒すことをやめません。そして傷がかさぶたになる頃に、また次の痛みが生まれてくると言われますが、傷の痛みを知る人にしか同じ傷は癒せないからこそ、カイロンの絶えない痛みは癒しの本質を私たちに教えてくれるのかもしれませんね。